板倉町谷田川下流域のヤナギ
更新日:2020年8月6日
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高木になるアカメヤナギ | アカメヤナギの雄花 | 早春のヤナギ山 |
板倉町を東西に流れる谷田川流域に生育するヤナギ属の木を調べる機会に恵まれました。
その地方に住む人々は台風などの風災害との戦いの歴史を背負っています。そのための生活の工夫に水塚や揚げ舟などがありますが、そのことはよく知られたことです。平地では生活の燃料としてクヌギやコナラなどが使われてきました。たびたび風水害に見舞われる当地は、雑木林の発達した場所はいくつもありません。人々は、谷田川の中州や川岸に土砂を堀り上げ、そこに田を作り稲を育てました。これを川田といいますが、その周りに大木になるアカメヤナギを植えあるいは挿し芽をして殖やし、川の浸食から田や堤を保護したり、その枝や幹などを貴重な燃料源として利用してきたのです。
今回の調査で板倉ゴルフ場の西側にある約11.4ヘクタールのヤナギ山に417本のヤナギを数えました。そのうちアカメヤナギは309本でした。ヤナギは雄株と雌株からなる雌雄異株です。その90%以上が雄株で、前述のように人為的にヤナギ山が作られたことが推測できます。この地方には「おとこやなぎ」「おんなやなぎ」という言葉が残っており、「ヤナギ山にはおとこやなぎを植えろ」と言われていたそうです。このことでヤナギ山が地域の自然と人々が作り出したすばらしい文化財として発達してきたのだということがわかりました。春の光を映す川岸に生育するヤナギ類の色とりどりの芽吹きは、東毛の貴重な一風景だと思います。
青木雅夫(ぐんま地域文化 第25号 より)